分離症とは
2022/06/20
腰椎分離症(ようついぶんりしょう)は、脊椎の一部である腰椎(脊椎の下から5つの椎骨で構成される部分)の中で一番下にある第5腰椎に好発する、椎弓(ついきゅう)と呼ばれる腰椎の後方部分が分離した状態です。
椎骨は、前方の円柱状部分を椎体、その後ろから出ているアーチ状の部分を椎弓といいます。
椎弓の斜め後方部分は細く弱いため、スポーツなどで激しい運動を繰り返していると疲労骨折を起こして亀裂が入ることがあり、それが進行すると椎体と椎弓が分離してしまいます。
多くはこの疲労骨折が原因と考えられており、成長期(中学生前後)のスポーツ選手に多発します。
日本の一般成人では約6%(男性8%、女性4%)に認められます。
若年者の腰痛の原因の一つとなり、体幹の前後屈、回旋を繰り返し行うスポーツに多く見られます。
腰椎という骨の亀裂により起こる腰痛であるため、長時間経過観察をする必要があります。
原因
多くは骨が未発達な成長期の小学生~高校生(特に中学生頃)に、背中を反らすジャンプや腰の回旋(体をひねる動作)を繰り返し行うスポーツ、オーバートレーニングで腰椎の後方部分に亀裂が入って起こります。
野球、サッカー、バレーボール、バスケットボール、ラグビー、柔道など、身体の前後屈や腰のひねり、ジャンプからの着地といった特定方向への動作を繰り返すスポーツの過度な練習が原因となるケースが多いとされています。
「ケガ」のように1回で起こるわけではなく、スポーツの練習などで腰椎をそらしたり回したりする繰り返しのスポーツ動作のストレスで起こる椎弓の関節突起間部の疲労骨折と考えられています。
ただし練習し過ぎると必ず発症するわけではなく、体質的な要因も影響すると考えられています。
多くの方がスポーツの競技中や競技後に腰痛を自覚して来院しますが,中には気付かずに長い時間が経ってから受診して判明したり、腰痛が軽度であったため安静にすることで腰痛が良くなり病院を受診しなかったとする方も見受けられます。
また、まれに先天的に遺伝によって腰椎が弱く、スポーツと関係なく分離症を生じる場合もあります。
一般人の約5%、スポーツ選手では30〜40%が分離症を起こしているといわれています。
分離症の多くは10歳代で起こりますが、両側(左右)分離症の場合は特に、それが原因となって将来的に腰椎が前にずれる「腰椎分離すべり症」に進行していく場合がありますのでさらなる注意が必要です。
症状
好発年齢のスポーツをしている方の腰痛が 2週間以上続く場合は腰椎分離症を疑う必要があります。
症状は病期によって異なります。
分離発生段階には、狭い範囲に限られた痛みを感じ、ほとんどがスポーツ中やスポーツ直後に腰痛を自覚します。
背中を後ろに反らせたり、腰をひねったりすると腰痛が強くなります(時には前かがみでも増強します)。痛みの場所は腰の左側,右側,両側それぞれ病態によって異なります。
腰痛が主症状ですが、お尻(臀部)や太腿外側の痛み(重苦しい、だるい)が出る場合があります。
また、狭い範囲にズキッと響く痛みが特徴的で分離高位の腰椎に叩打痛、圧痛を認める場合があります。安静時は痛みがないこともあるため、発症に気づかないケースも少なくありません。
運動だけでなく長時間の立位、座位、中腰姿勢でも腰痛を起こしやすいですが、椎間板ヘルニアのような神経麻痺症状を伴うことはありません。
痛みのため、脊柱起立筋の緊張が高まります。
安静にすると1ヶ月ほどで症状は落ち着いてきますが、癒合していない場合、将来的に腰椎椎間板ヘルニアや腰椎分離すべり症になる可能が高くなります。
完全に骨が折れてしまい、痛いままそのまま長期間放置していると分離が完成してしまい、分離部は偽関節(ぎかんせつ)というグラグラな状態になり、治りにくい状態になります。
このときは、主に腰痛や下肢痛が生じます。このときの腰痛の原因は分離部の炎症と考えられ、膝の悪い人の膝に水がたまるように、分離部にも水がたまるようになります。
また偽関節となった分離部は、周囲に骨の棘(とげ)が発生し、神経と接触することで下肢痛を引き起こすことがあります。
長時間座っていたり、立っていたり、歩行時などに分離した部分の神経が圧迫されると、坐骨神経痛(腰から下肢の痛み)やしびれなどの症状が出てくることがあります。
また、発症したことに気づかずそのままにしていて、高齢になってから痛みが出始めるケースもあります。
若い頃の腰痛を放置した方で、年をとってからの腰痛で医療機関にかかられる方の中に、この分離症による偽関節を認めることがよくあります。
また、腰椎分離すべり症に進行すると、慢性的な腰痛の原因になります。
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